プロローグ
果たしてNFT(Non-Fungible-Token)とは?
NFT(Non-Fungible-Token)技術は2017年にイーサリアムブロックチェーン上で誕生した「CryptoKitties」というゲームに端を発していますが、世間一般に注目され始めたのは2021年に入ってからです。実際、ブロックチェーン技術を利用して、クリエイターが作品の所有権を主張できる技術的根拠を与えようとする考え方は2014年も前からありましたが、その典型的な事例がKevin McCoyとAnil Dashが試みた史上初のデジタルアート『Quantum』だと言われています。
その後、デジタルアートとブロックチェーン技術の相性にいち早く気づいたテック業界の人々は、その商業的価値を見込んで次々とNFTプロジェクトを立ち上げることになりますが、残念なことに時代はまだ追いついていなかったらしく、NFTアートはそれほど注目されていませんでした。
転機が訪れたのは2017年、Matt Hall と John Watkinsonが作成したCryptoPunksNFTがMashableの記事に取り上げられ、再びテック業界を沸騰させることになりますが、同年12月にDevin FinzerとAlex AtallahがニューヨークでNFTマーケットプレイスOpenSeaを設立しました。そして2018年John CrainがSuperRareを立ち上げ、Coldie、Matt Kane、パク等有名なデジタル・アーティスト達を生み出しました。
そして2020年、NFTとファンダムエコノミー圏を結びつけることに成功したNBA Top Shotが新たな風を吹きました。NBA Top Shot はDapper Labsというブロックチェーン企業が開発したNBA選手のコレクタブル系NFTであり、リリース後爆発的な人気を博し、これを契機に世界中で『NFT』に関心が寄せられることになります。2021年、デジタルアート・アーティストのBeepleが出品した作品『エブリデイズ:最初の5000日』(Everydays: the First 5000 Days)』が6940万ドルで売却されたことで、NFTマーケット・センチメントは一気に高まることになります。同年、NFTブルーマーケットと言われる頃にBored Ape Yacht Club(BAYC)やAzuki等NFT Profile Pictures (PFP)系コンテンツが市場で脚光を浴び、Axieに代表されるブロックチェーンゲーム(BCG)が台頭し始めました。
NFTの進化:テクノロジーからカルチャーへ
時系列に沿ってNFT(Non-Fungible-Token)の文脈を簡単にまとめましたが、読者の皆さんもこの数年の間、デジタル・コンテンツの価値構造が激変していることに気づいたはずです。収益モデルを主軸にNFTコンテンツの変化を区切りますと、概ね次のようになります。
NFT1.0:初期段階において、NFT(Non-Fungible-Token)は所有権を主張できる新しい技術として評価されたものの、「価値=技術」という側面でしか捉えられておらず、資本市場と一般大衆から注目されていませんでした。
NFT2.0:CryptoPunksNFTの影響を受けて、デジタル・コンテンツとNFTの相性の良さを見出した業者達が、「価値=アーティストの知名度」というベーシックロジックに基づいて収益モデルを組み立てましたが、SuperRareがその代表例でしょう。但し、純アート系のNFTは価値共有を行うことが難しく、少人数でしか楽しめられないところがボトルネックでした。
NFT3.0:NBA Top Shotの大成功により「NFT+ファンダムエコノミー」のモデルが盛り上がることになりますが、要するに既存IPコンテンツの熱狂的なファン層にNFTを販売するごくシンプルな試みです。NFT2.0とは異なって、「価値=既存IPコンテンツの人気度」に変化しており、この戦略によってNFTはCryptoに触れたことのないユーザー層へと拡大しました。
NFT4.0:Bored Ape Yacht Club(BAYC)、Azuki等のPFP系NFTが流行り出すに連れて、NFTプロジェクトの収益モデルは「価値=コミュニティ」へと徐々に変化しました。NFT4.0時代からNFTコンテンツは「単なるグラフィック」から特定のカルチャー空間へと繋がる「アクセスキー」に進化しました。要するに、NFTは同じ考え方や価値観を共有したい者同士が集まるための「会員登録証」になった訳です。
特にNFT3.0、NFT4.0からテクノロジー的な側面より、カルチャーとしての属性が強調されているところが特徴的です。従って、この時代からNFTプロジェクトが成功するための方法論としては、既存のカルチャーに根付くか、若しくは新しいカルチャーを作れる能力を備えることでした。
NFTの流動性問題と新たなプラットフォーム
大手取引所の不正問題等によって引き起こされた一連の不祥事の影響で、仮想通貨全体がベアーマーケットに陥ることになり、NFTの流動性問題が浮き彫りになりました。要するに、どうやってNFTコンテンツを現金化するべきかという非常に現実的な問題に直面している訳です。NFTfi、Blur等のプラットフォームが台頭したのも、このような深刻な流動性問題があったからだと考えています。
今までFOMOの情緒と投機性によってNFTの流動性問題はある程度隠されてきましたが、事実上、ユーザー同士のNFT取引はほとんど発生しておらず、帳面上見せかけている繁栄ぶりは基本的にプロジェクト側のウォッシュトレードだったことも暴露されました。
果たして、NFT(Non-Fungible-Token)はこれからどこへ向かうのでしょうか?
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